海賊版 特 集 - 海 賊 デ ザ イ ン 瓶

スワ牛乳 渡辺牛乳渡辺牛乳
スワ牛乳

諏訪牛乳処理場(千野貞夫)
長野県諏訪市弁天町2919
八ヶ岳酪農協同と提携・独自銘柄廃止(S31年頃)
第一硝子S31年製・市乳180cc底面陰刻
昭和30年代初期
渡辺牛乳

渡辺牛乳
宮城県宮城郡七ヶ浜町菖蒲田
廃業(S30年代後期)
日本硝子製・正180cc側面陽刻
昭和30年代中期〜後期

東城(酪農)牛乳東城(酪農)牛乳 サカモト牛乳 (1)サカモト牛乳 (1)
東城(酪農)牛乳

東城酪農業協同組合
広島県比婆郡東城町大字川西487
広島県酪に統合(H6年)・工場閉鎖(H9年)
石塚硝子製・正180cc側面陽刻
昭和30年代中期
サカモト牛乳 (1)

坂本節夫(坂本牧場)
岡山県笠岡市富岡836-2
工場閉鎖・独自銘柄廃止(S35年前後)
広島硝子工業製・正180cc側面陽刻
昭和30年代初期〜中期

サカモト牛乳 (2)サカモト牛乳 (2) 木村牛乳木村牛乳
サカモト牛乳 (2)

坂本節夫(坂本牧場)
岡山県笠岡市富岡836-2
工場閉鎖・独自銘柄廃止(S35年前後)
石塚硝子製・正180cc側面陽刻
昭和30年代中期
木村牛乳

木村ミルクプラント(木村牧場)
宮城県牡鹿郡女川町女川浜字大原1
工場閉鎖・独自銘柄廃止(H10年代)
ユニオン硝子工業製・正180ml側面陽刻
昭和43年頃〜200cc移行まで

戦後は街の看板やマッチラベルなど、各種広告に重宝されたミッキーマウス。事実上フリー素材だった時代は確かにあった。しかしその大半は下手糞な模写、時に少々のオリジナル要素が加わり、一線を越えた相似性を持つものは意外と数が少ない。

ところがスワ牛乳のミッキーはどう見ても…原典イラストを忠実にトレスしたような、潔いデッドコピーの極み。版下の作成時、ディズニーの絵本か何かを直に引き写していたのだろうか。製瓶会社もよくぞ受注した、あぶない一本である。

スワ牛乳は長野県諏訪市にあった地場乳業さん。昭和31年に北海道バター(雪印乳業)系列の八ヶ岳酪農協同と業務提携し独自銘柄は消滅、「クロバー牛乳」の受託生産に転向。間もなく拠点は八酪の茅野工場へ移転、諏訪牛乳店主さんは移転先で製造責任者を勤めることとなった。

◆人気爆発!ミッキー続々出演

どでかい牛乳瓶を抱えてニッコリ笑う渡辺牛乳のミッキー。スワ牛乳に比べ鼻のところを白抜きしたりと“自家製造”の匂いも感じる。全体的には初期のミッキーマウスに近い絵面。これならオッケー、のはずもなく、禁断のアウトローびん認定は免れない。

ディズニー草創期を彷彿とさせる東城牛乳(東城酪農牛乳)のミッキー。昭和30年代中期の瓶だが、終戦のどさくさ・インチキテイストを継ぐ貴重な一本。思い出しながら描いたような中途半端さに、ウォルトディズニーも思わず訴訟を断念か。

東城牛乳の偽ミッキーを横目に模写した風貌で果敢に攻めるサカモト牛乳。いや、こっちが若干上手いかも?とか、今となってはそういう問題ではなく明らかに全部ダメです…。

◆デザインの提案は資材代理店?

それにしても似通った構図が多い。特に東城牛乳(広島)とサカモト牛乳(岡山)は地理的に隣接しており、往時の乳業資材代理店が各メーカーに「巷で人気のオススメデザイン♪」てな調子で営業展開した可能性もありそうだ。楽しい時代である。

変り種は木村牧場の蝶ネクタイ男。アメリカの長寿漫画「ブロンディ」に登場する憎めない怠け者キャラクター、ダグウッドの借用と見られる一本だ。

現在はあまり馴染みのないタイトルだが、日本では昭和20〜30年代に朝日新聞・週刊朝日が翻訳連載、国内で単行本も出ていた。往時の英語版はネット上でいくつか読める。“木村牧場版”は帽子のへこみの描き方、跳ね上がった前髪、蝶ネクタイにスーツ、動作表現など相似性が高い。

何しろ木村牧場さんは昭和30年代の景品コップに、ポパイの絵をそのまんま使った例も確認している。この木村ブロンディーと、上掲の渡辺ミッキー(いずれも宮城県)が持つ巨大ビン。大胆な陰影の付け方がそっくりで、同一人物のデザインかも知れない。


瀬戸牛乳瀬戸牛乳 フタバヨーグルト(第一乳製品)フタバヨーグルト(第一乳製品)
瀬戸牛乳

瀬戸牛乳(株)
愛知県瀬戸市陶原町6-9
再編合理化で工場閉鎖・廃業(H14年)
石塚硝子製・180cc底面陰刻
昭和30年代初期
フタバヨーグルト

第一乳製品製造所
愛知県岡崎市元能見町133
廃業(S61年前後)
山村硝子S36年製・90cc底面陰刻
昭和30年代中期〜後期

貝瀬牛乳貝瀬牛乳 尾西牛乳尾西牛乳
貝瀬牛乳

貝瀬ミルクプラント
群馬県沼田市沼田1285
廃業(H28年)
石塚硝子製・正200cc側面陽刻
昭和50年代〜平成5年頃
尾西牛乳

尾西牛乳(有)
愛知県一宮市今伊勢町本神戸字立切東18
廃業(S49年前後)
東洋ガラス製・正180cc側面陽刻
昭和40年代中期〜後期

田中牛乳 (コップ)

どこかで見覚えがあり過ぎる瀬戸牛乳のペコちゃん。昔は本家側のイラストも描線が多く、丁度こんな感じのタッチだった。

後継瓶は未入手も、程なく瀬戸牛乳オリジナル・男の子の顔絵に切り替わっている。

愛知県はペコちゃん受難の地か、第一乳製品のフタバヨーグルトも不敵にほほ笑む。みんな真似てるからOK?なわけもなく、不二家の顧問弁護士からお便りが来る危険水準だ。

岩手・不二家乳業のドット絵瓶
沼津保証牛乳のミルキー広告瓶
ペコちゃんの歴史 (不二家)

田中牛乳 (コップ)

(株)田中牛乳
熊本県芦北郡芦北町花岡1818
自家処理撤退・独自銘柄廃止(H11年頃)
打刻なし
昭和30年代後期

第一乳製品は県下各社の発酵乳を中心に請け負いが多く、過去の豊田乳業や岡崎ミルク(ユニオンヨーグルト)の紙キャップに名前が見える。しゃくれ上がった“ヨーグルト”ロゴはサンヨーグルト系列。原液/種菌は別の専業筋から仕入れる業態だったらしい。

しかしペコちゃん・ポコちゃん自体、もとは米バード・アイ社(のちゼネラルフーズ社が吸収合併)の広告キャラクター(メリーちゃん・マイク君)の無断拝借であったと知られる。元祖はオレンジジュースのアイキャッチだ。(⇒ペコちゃん疑惑・フォト版不二家のペコちゃん実はパクリだった

◆愛の神・キューピーは許された

貝瀬牛乳と尾西牛乳のキューピーはオマケで掲載。「海賊デザイン瓶」と呼ぶのは酷だろう。かつて埼玉県岩槻市には直球勝負の「キューピー乳業(キューピー牛乳)」すらあった。(⇒貝瀬牛乳の紙栓尾西牛乳の紙栓/牛乳キャップ収集家の活動ブログ)

いずれもキャラクターの原作者であるローズ・オニール(の権利承継者)から利用上のライセンスを得たとは思えないが、キューピーに纏わる権利関係は少し複雑だ。

キューピーはローマ神話に登場する愛の神クピドの戯画化。米ローズ・オニールが明治42年、雑誌の挿絵に描いた。可愛らしい姿が受けて、大正時代には日本でもキューピー人形が大流行。

作者は著作権の主張にあまり熱心でなく厳密な運用も困難な時代、当時から世界的に無許諾の関連商品が出回り、すっかり一般化。マヨネーズのキユーピーやワリコーの日本興業銀行なども勝手にイメージを使ったが、ローズ・オニール当人とその承継者を含め誰も使用料を求めなかったという。

キユーピー株式会社は大正11年に日本で、昭和40年にはアメリカでそのマークの商標登録を済ませたが、その後、第三者が国内のキューピー使用権をオニール家から獲得、裁判沙汰にはなった。(⇒東京地裁・平成10年(ワ)13236号/東京高裁・平成11年(ネ)第6345号

最後は変化球的なパクリ、田中牛乳の奇妙な牛マークが目を引く販促コップで大団円。森永牛乳全酪/ゼンラク牛乳の項を見れば、この図案の目指した境地が分かると思う。牛乳瓶は未回収で、一体どんなデザインだったのか興味をそそられるところだ。

― 謝辞 ―
木村牧場さんの蝶ネクタイ男の出典につき、メールで情報を頂きました。
また、田中牛乳さんの現況そのほかにつき、kazagasira様よりご教授・ご協力頂きました。


■スワ牛乳
創業> 不明ながら戦前
昭09> 千野政三/長野県諏訪郡平野村
昭31> 諏訪牛乳処理場・千野貞夫/長野県諏訪市弁天町2919
昭31> 八ヶ岳酪農協同(株)と業務提携・「クロバー」銘の受託製造に転換
独自銘柄廃止> 昭和31年前後
工場閉鎖> 昭和33年前後
電話帳掲載・公式サイト> 未確認

■渡辺牛乳
創業> 不明
昭31> 渡辺牛乳・渡辺正一/宮城県宮城郡七浜村菖蒲田
昭34> 七ヶ浜村は町制施行する
昭34〜36> 渡辺牛乳/宮城県宮城郡七ヶ浜町菖蒲田
廃業> 昭和30年代後期
電話帳掲載・公式サイト> 未確認

■東城(酪農)牛乳
設立> 昭和29年、東城酪農業協同組合として
昭34〜36> 東城酪農業協同組合/広島県比婆郡東城町大字川西487
昭39〜41> 同上/広島県比婆郡東城町大字川東
昭42〜46> 東城牛乳/同上
昭47〜59> 東城酪農業協同組合/同上 ※昭和51〜52年、工場移転の記録あり
昭60〜平04> 同上/広島県比婆郡東城町大字川西787-3
平06> 県下の全酪農協は広島県酪農業協同組合へ統合、同・東城工場となる
平09>
乳業施設再編合理化により工場閉鎖
工場閉鎖> 平成9年
電話帳掲載・公式サイト> 未確認

■サカモト牛乳
創業> 不明ながら戦前
昭09> 坂本茂一/岡山県上田郡笠岡町
昭27> 笠岡町は金浦町と合併し、笠岡市となる
昭34> 坂本節夫/岡山県笠岡市富岡836-2
電話帳掲載> 「坂本牧場」「笠岡明治牛乳販売(有)」「明治牛乳笠岡販売所」
                   /岡山県笠岡市富岡836-2 ※明治牛乳販売店として営業中
自家処理撤退・独自銘柄廃止> 昭和35年前後
公式サイト> 未確認

■木村牛乳
創業> 不明ながら戦前
昭09> 木村慶三郎/宮城県牡鹿郡女川町
昭31> 女川ミルクプラント・木村正/宮城県牡鹿郡女川町女川
昭34〜42> 木村ミルクプラント/同上
昭43〜53> 同上/宮城県牡鹿郡女川町女川浜字大原1
昭56> (資)木村乳業/同上
昭58〜平04> 木村乳業(株)/同上
電話帳掲載> 同上/宮城県牡鹿郡女川町女川浜字大原1-17
                        ※平成23年、東日本大震災の津波被害を受け、現在は更地
自家処理撤退・独自銘柄廃止> 平成10年代?以降は販売店さんとして営業
公式サイト> 未確認

■瀬戸牛乳
創業> 不明 ※参画者により異なる
昭09> 大澤卯三郎/愛知県東春日井郡旭村
           内田忠蔵/愛知県東春日井郡瀬戸町
昭12> 瀬戸牛乳商業組合が発足 ※一帯の牧場・搾乳販売業者が合同
昭14> 瀬戸牛乳商業組合・内田忠蔵/愛知県瀬戸市大字今656 ※「今」は旧・旭村
昭31> 瀬戸牛乳商業協同組合・大沢卯三郎/愛知県瀬戸市陶原町6
             ※昭和20年代、旧組合を母体に商業協同組合を結成、
                 その際にミルクプラントを陶原町に新設したと見られる。

昭34〜36> 瀬戸牛乳(株)/愛知県瀬戸市陶原町6-9
昭39〜平13> 同上/愛知県瀬戸市川端町2-7
平14> 乳業施設再編合理化により工場閉鎖
廃業> 平成14年
電話帳掲載・公式サイト> 未確認

■第一乳製品(フタバヨーグルト)
創業> 不明ながら戦後
※以下すべて「乳製品/発酵乳・乳酸菌飲料処理工場」としての掲載
昭40〜44> 第一乳製品製造所/愛知県岡崎市元能見町133
昭46〜53> 同上/愛知県岡崎市伊賀町219
昭56〜60> 同上/愛知県岡崎市錦町7-14
廃業> 昭和61年前後?
電話帳掲載・公式サイト> 未確認

■貝瀬牛乳
創業> 不明ながら明治後期
昭09> 貝瀬常吉/群馬県利根郡沼田町下原
昭31> 貝瀬ミルクプラント・貝瀬嘉一/群馬県沼田市1285
昭34〜36> 貝瀬ミルクプラント/同上
昭39〜48> 同上/群馬県沼田市沼田1285
昭50〜平13> 同上/群馬県沼田市材木町1285
電話帳掲載> 同上 ※当時
廃業> 平成28年
公式サイト> http://kawasemi14.exblog.jp/12045769/ (参考)

■尾西牛乳
創業> 不明ながら戦前
昭09> 渡邊新一/愛知県中島郡今伊勢村
昭16> 今伊勢村は町制施行する
昭30> 今伊勢町は一宮市に編入される

昭31> 尾西市乳(有)・渡辺新一/愛知県一宮市今伊勢町本神戸 ※商号誤り?
昭34〜43> 尾西牛乳(有)/同上
昭44〜48> 同上/愛知県一宮市今伊勢町本神戸字立切東18
廃業> 昭和49年前後
電話帳掲載・公式サイト> 未確認

■田中牛乳
創業> 不明ながら戦前
昭09> 田中寛象/熊本県葦北郡花園
昭31> 田中ミルクプラント・田中寛/熊本県葦北郡佐敷町
昭34〜39> 田中共養舎/熊本県葦北郡芦北町大字花岡1818
昭40> 田中ミルクプラント/同上
昭41〜平04> (株)田中牛乳/同上
平11> 乳業施設再編合理化により工場閉鎖
電話帳掲載> 同上 ※現在は熊本県酪連(らくのうマザーズ)製品を商う
工場閉鎖・独自銘柄廃止> 平成11年頃?
公式サイト> 未確認


処理業者名と所在地は、牛乳新聞社「大日本牛乳史」・[商業組合一覧]・全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。電話帳の確認は平成21年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



漂流乳業