いかるが牛乳・鵤牧場本店 (1)いかるが牛乳・鵤牧場本店 (1) いかるが牛乳・鵤牧場本店 (2)いかるが牛乳・鵤牧場本店 (2)
いかるが牛乳 (1)

(株)鵤牧場本店⇒いかるが乳業(株)
大阪府大阪市東住吉区加美福井戸町3-52
石塚硝子製・正180cc側面陽刻
昭和40年代中期〜50年代
いかるが牛乳 (2)

(株)鵤牧場本店⇒いかるが乳業(株)
大阪府大阪市東住吉区加美福井戸町3-52
山村硝子製・正200cc側面陽刻
昭和40年代中期〜50年代

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大正5年、大阪市生野区の牧場で搾乳販売を始めて以来、100年余の歴史を刻む、いかるが牛乳の元祖。現在地・平野区への移転は昭和20年。10kmほど離れた湾岸の住之江区には、同様に「いかるが」銘を商う、親戚筋の(株)いかるが牛乳が並存する。

両社の創業年次を比較すると、本項のいかるが乳業(株)がより古く、また掲載瓶の通り、かつては鵤牧場本店の名乗りで、こちらが本家筋だ。

それぞれ独立した別会社だが、昭和30〜40年代に至って両社社長が同じ時期(鵤謙之祐氏)はあり、全く無縁とも言い難い。ただ近年、事業上密接な繋がりはなく、平成28年に本項乳業は他社へ経営譲渡(後述)、完全に道が分かれた。

鵤牧場本店のちらし(昭和20年代)
画像上:鵤牧場本店のちらし(昭和20年代)…最優秀市乳・模範工場・府下最大・最古の歴史、雄大な宣伝文が並ぶ。住所は現在地の旧称「中河内郡加美村福井戸町」。もとは京阪牛乳の拠点、戦時疎開で遊休地になった所。戦後に鵤牧場が賃借移転、のち譲り受けた。

◆ふたつの「いかるが」・権利関係は

同一ブランド「いかるが」を掲げて相互営業となると、商標登録はどうなるのか。概況を商標検索〜特許電子図書館で牛乳探しにまとめた。やはり本店の登録が圧倒的、上掲の瓶に見られる3つの円形ロゴを含め、遺漏なくあれこれ網羅されている。

牛乳瓶に標示のロゴに対してRマーク(登録商標)の添付明記は珍しく、他社類例は極端に少ない。同銘展開の相手方を意識した結果?かも知れない。

◆掲載瓶・現行の瓶製品などについて

本家の古瓶はあまり出て来ず、当時のラインナップ不詳ながら、(1)番の四角瓶は加工乳(デラックス)向けだったろうと思う。公式サイトの取扱商品一覧は紙パックのみ。他社アイテムの取り次ぎも多く、食品全般の卸し問屋さんという趣だ。

乳業探訪記さんの記事によれば、白牛乳ビン詰めは継続中(平成23年時点)とのこと、宅配や学校給食に限っての供給らしい。

価格面で大手に対抗し得ず、量販店出荷を抑制の傍ら、病院・老人保養施設への売り込みに注力。顧客は関西ほぼ全域に広がった。さらに下記の経営母体変更によって、平成30年には海外進出(インド現地子会社・Samurai Dairyの発足)も果たしている。

◆経営主体は昭和化工さんに移行

平成28年、吹田市に本社を置く工業薬品・化成品メーカーの昭和化工(株)が株式の大半を譲受、いかるが乳業(株)は同社傘下に入り、新しい一歩を踏み出す。創業家社長だった鵤氏は取締役に再任され、当面は引き続き事業に携わる。

老舗乳業の経営交代も増えてきた。かつては同業者の買収が大半だが、昨今は隣接業界・異業種の参入も活発。くじらい乳業(埼玉)、チチヤス(広島)、オーム乳業(福岡)、九州乳業(大分)、弘乳舎(熊本)ほか、量販店のPB工場へ転換の例もある。

― 謝辞 ―
宝蔵様より鵤牧場本店の家庭向け広告(ちらし)の画像をお寄せ頂きました。

― 参考情報 ―
温度・品質管理を徹底「価格競争に巻き込まれない」 (物流ウィークリー)
いかるが乳業の紙栓 (牛乳キャップとは) / 同・紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
いかるが乳業 (乳業探訪記) / 同・紙パック製品 (愛しの牛乳パック)


創業> 大正5年、鵤牧場として
昭03> 鵤牧場・鵤春蔵/大阪府大阪市東成区鶴橋天王寺町
昭05〜15> 同上/大阪府大阪市東成区鶴橋南之町1-5605
昭20> 中河内郡加美村福井戸町に本社・工場を新設京阪牛乳の戦前拠点
設立> 昭和30年、(株)鵤牧場本店として
昭30> 加美村福井戸町は大阪市に編入され、東住吉区の一部となる
昭31> (株)鵤牧場本店・鵤謙之助/大阪府大阪市東住吉区加美福井戸町3-52
昭34〜48> (株)鵤牧場本店/同上
昭49> 東住吉区の一部地域は平野区に分区される
昭50〜53> 同上/大阪府大阪市平野区加美南3-4-15
昭55> いかるが乳業(株)へ改称
昭56〜平13> いかるが乳業(株)/同上
平28> 昭和化工(株)が経営権を取得、同子会社となる
電話帳掲載> 同上
公式サイト> http://www.ikaruga-milk.co.jp/

処理業者名と所在地は、[大阪商工名録]・牛乳新聞社「大日本牛乳史」・[大日本商工録]・全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。電話帳の確認は平成19年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



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