雄平牛乳雄平牛乳 雄平牛乳 (2)雄平牛乳 (2)
雄平牛乳 (1)

雄平酪農業協同組合
秋田県平鹿郡増田町増田字伊勢堂南83
日本硝子製・180cc側面陽刻
昭和30年代中期
雄平牛乳 (2)

雄平酪農業協同組合
秋田県平鹿郡増田町増田字伊勢堂南83
日本硝子製・180cc側面陽刻
昭和30年代中期〜後期

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戦後発足から平成に至るまで、雄勝・平鹿郡域に展開した農系ミルクプラント。団体呼称と商い銘柄は、集乳・販売エリアの2郡を示す雄平地区に由来。往時は牛乳・乳製品に加え、余乳対策として始めたパン・菓子類の製造で躍進。地元に確固たる地歩を得た。

平成8年、市況悪化を受けて再編合理化に応じ、県下諸組合とメーカー各社の合資による秋田県農協乳業へ合流。独自銘柄は消滅している。

掲載は昭和30年代の流通品、仕立ての珍しい一本。堂々の農協マークに立体的な雄平酪農のレタリング、地銀広告と自らの商品案内、ビン返却を促す注記を盛り込んだ二色刷り。ビン詰めは50年代に廃止、以降は紙パックのみとなったようだ。

増田町にあった雄平酪農協の工場外観(昭和43年頃)
画像上:増田町にあった雄平酪農協の工場外観(昭和43年頃)…掲載ビンにも宣伝される往年の稼ぎ頭、「牛乳パン」の看板が出ている。

◆雄平酪農業協同組合の発足

昭和22年、行政当局の畜産奨励で十数頭の乳牛が町にやって来た。有志一同は増田町酪農組合を結成して牛飼いに挑み、翌年には一応の体裁を整える。

しかし町の任意組合だけでは商売にならない。販路開拓や庶務を担う生産者団体が求められ、周辺農家も合流した雄平酪農業協同組合を設立。農協は間もなく処理工場を落成して「雄平牛乳」の直売に乗り出し、年々売上高を伸ばしていった。

◆余った牛乳で菓子パン作り

集乳・販売量が増加すれば、経営の悩みは何処も同じ、原料乳の過不足だ。特に飲用乳は冬季需要の落ち込みが激しく、在庫できない生乳の始末に困る。

そこで雄平酪農協は昭和33年に製パンへ着手。翌年には製麺事業を興し、取り扱い商品を多角化した。結果、この方針が大当たり。昭和40年代は菓子パン・ビスケット類の売り上げ金額が、牛乳類の総計を大きく上回るほどだったという。

Web上で懐古談を探してみると、コーヒーサンドやウェハースに挟まれた三角カステラなど、菓子パンの記憶が多い。雄平牛乳も学校給食では定番だったはずだが、言及は稀だ。※現在、パン類の商標・販売権は、オリオンベーカリー(岩手県花巻市)に譲渡されている。

ソウルフード3兄弟:オリオンベーカリーさんのコーヒーサンド (食べログ)
県南でしか手に入らない (秋田県羽後町から) / 雄平酪農 (スキーとかの)
故郷を思い出すパン (まったり) / オリオンベーカリーコーヒーサンド (秋田deヌードる)

◆集約合理化で秋田県農協乳業へ

世は進んで平成に至り、少子化・消費低迷・原料高騰の苦しい時代を迎える。中小規模のメーカーは安売り競争、設備老朽化に喘ぎ、零細統合が急務となった。

雄平酪農協は国の施策・乳業再編整備等対策事業適用第一号により、近在の高橋牛乳店(仙北郡千畑町)、加賀牛乳店(横手市清川町)さんら計3工場の統合に向かう。

平成7年、県経済連と全酪連(ゼンラク牛乳)、雄勝酪農協、羽後町酪農協、ほか県下諸組合の出資参画で、秋田県農協乳業(株)が誕生。翌年に平鹿郡十文字町(現・横手市)に新工場を開き、雄平・高橋・加賀の各工場は閉鎖、旧銘を漸次廃止した。

秋田県農協乳業株式会社 (十文字町工業振興会)
乳業再編への取り組み (農畜産業振興事業団-月報「畜産の情報」)
資料5-2 酪農をめぐる情勢 (農林水産省-食料・農業・農村政策審議会)

◆約15年間操業のすえ経営を断念

全国初の合理化・基盤強化のモデルケース、鋭意発進した秋田県農協乳業。後年はJA全農(旧・県経済連を包含)グループ傘下入り。ラインナップは「あきた農協牛乳」「秋田3.6牛乳」といった紙パック製品が中心。瓶装は「がんじょうくんヨーグルト」のみだった。

万全の体制を構築と思いきや、市場競争には勝てなかった。平成24年、赤字続きで業績改善見込めず、廃業・解散。工場跡地は物流倉庫に転換する。

映画「銀の匙」と秋田の酪農 (新河鹿沢通信)
秋田県農協乳業、今月末で解散 業績改善見込めず (農業ビジネス)
農民的ミルクプラントの存立と経営戦略に関する研究 (酪農学園大学)

雄平酪農協さん自身は、平成12年までに雄平酪農業生産組合へ組織換えを実施。組合員減少で、農協法の定める下限を割り込んだのかも知れない(現況・仔細不明)。

◆掲載瓶・銀行広告などについて

掛金と預金で明るい家庭…秋田相互銀行(現・北都銀行)の素朴なキャッチが光る。異業種広告の採用は、福岡の八女牛乳(醤油)や筑後牛乳(清酒)、熊本・氷川酪農(デパート)さんの類例があり、たぶん乳業資材の代理店で出稿を募ったものだろう。

秋田相互銀行の広告(昭和31年)

秋田相互銀行の広告(昭和37年)
画像上:秋田相互銀行の広告(昭和31年、37年)…掲載瓶の広告欄と同じトレードマークと、ちょっと癖のあるロゴタイプを確認できる。

銀行広告は農協貯金と競合しかねないが、雄平酪農協は名前の通り総合農協でなく専門農協。従って自らは信用事業を手掛けておらず、問題なしの判断か。

後継ビンは赤の単色刷り、相乗り広告は「ホモゲ牛乳」標示に置き換え、商品リストは変わらず、の構え(現品は未入手)。アイスクリームに関しては森永乳業福島工場より仕入れ・請け売りだったため、列挙を見送ったらしい。

― 関連情報 ―
雄平酪農業協同組合 / 秋田県農協乳業の紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
同・紙栓 (牛乳キャップとは) / あきた農協牛乳 200mlパック (牛乳トラベラー)
約束の花の落ちるとき・旧相互銀行本店 (二〇世紀ひみつ基地)


昭22> 増田町の有志一同が増田町酪農組合を結成
設立> 昭和23年、雄平酪農業協同組合として
昭31> 雄平酪農協・児玉良太郎/秋田県平鹿郡増田町増田字伊勢堂南83
昭34〜平04> 雄平酪農業協同組合/同上
平07> 県下組合・事業者の合資により秋田県農協乳業(株)が発足
平13> 秋田県農協乳業(株)/秋田県平鹿郡十文字町仁井田字八萩85-2
平17> 増田町・十文字町を含む7町村が横手市に合併
平24> 秋田県農協乳業(株)は解散・廃業

電話帳掲載> 同上/秋田県横手市十文字町仁井田字八萩85-2 ※平成19年時点
                   全農物流(株)秋田県南倉庫(秋田支店 十文字事業所)/同上
                   雄平酪農業生産組合/秋田県横手市増田町増田字伊勢堂西135-1
工場閉鎖・独自銘柄廃止> 雄平酪農としては平成8年
公式サイト> http://www.j-ksk.com/comp/c-04nokyomilk.html (参考)

処理業者名と所在地は、全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。電話帳の確認は平成26年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



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