沿革不詳ながら戦後のご創業、十数年間に渡って商われた、県南のローカル銘柄。片面だけ見ると、まるで酒瓶。大きな地酒の広告が異彩を放つ一本。松井酒造合名会社「栄世菊」は、三潴郡(現・久留米市三潴町)にあった蔵元だ。
牛乳瓶の宣伝欄には通常、自らの乳製品を列挙するが、往時はこうした異業種広告もあり、ちょっと奇妙な感じ。秋田の雄平牛乳は相互銀行の広告、福岡の八女牛乳には醤油、熊本県の氷川酪農にデパートの広告が載った例もある。
筑後牛乳さんは昭和30年代後期に廃業、ブランドは消滅。間借り広告の栄世菊さんは長く続いたが、平成17年頃には休醸へ至ったらしい。地場乳業に同じく、造り酒屋もかつて全国無数に存在、中小メーカーの淘汰著しく激減の様子が相通ずる。
― 関連情報 ―
城島の古い町並み (古い町並みと集落・酒蔵探訪「一路一会」)
松井酒造(名)・榮世菊の胴ラベル (カンキ堂/昭和の酒ラベルギャラリー)