創業は明治20年、地元におよそ130年の歴史を刻む老舗。一般には品質理解の乏しい頃から、低温殺菌やノンホモ、ジャージー牛乳に取り組み、界隈に独自の地位を築く。
清里・キープ協会の生乳を用いたKEEPブランドの処理販売ほか、オーガニック・酪農家指定・消費者団体系のアイテムが多く、ヨーグルトやチーズも各種取り揃え、商い銘柄は多彩。現行のビン製品は720〜900mlの大瓶のみとなっている。
◆糸から牛への創業史
創業者の福島兼太郎氏は、かつて生糸売買を営み、商談・輸出のため横浜居留地へ赴く機会が多かった。外人さんの需要に応じ、乳牛飼育と搾乳販売が盛んなところ。当時はまだ珍しい仕事で、どんなものかと興味を抱く。(⇒会社沿革/公式サイト)
聞けば「病人や赤ちゃんに良い、白色のハイカラな飲み物が出る」という。将来性を感じた福島氏は、横浜の牧場で牛を分けて貰い、自ら群馬に連れ帰った。
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画像上:群馬唯一無菌牛乳・福島搾乳所の広告(明治37年)[群馬県営業便覧]より…創業から17年ほど経った頃。渋川と前橋にも支店を設けていたが、去就は不明。 |
試行錯誤の経過は不明だが、明治20年に「福島牛乳」を開業。糸偏商売から牛飼いへの転身は、埼玉のくじらい牛乳さんと良く似た感じ。大正期より戦後にかけて、幾度かの営業譲渡/経営交代が生じ、昭和25年以降は「高橋牛乳店」を名乗る。
◆レモン牛乳にリンゴ牛乳も
(1)番瓶の広告欄に、宇都宮名物「レモン牛乳」が見える。もとは栃木の関東牛乳さんが戦後に売り出した乳飲料。ご当地で人気を集め北関東一帯に定着。かつては茨城のトモヱ乳業さんほか、多くのメーカーが類似品を手掛けた。
昭和30年代、高橋牛乳店ではコーヒー牛乳、レモン牛乳に加え、リンゴ牛乳、オレンジ牛乳、パイン牛乳など、甘い乳飲料を次々ラインナップ。ところが40年代中期、添加していた人工甘味料チクロの発癌性が社会問題化・使用禁止、大半は終売に至る。
・群馬県にも「レモン牛乳」あった-タカハシ乳業が製造
(高崎前橋経済新聞)
平成12年に一度だけ「レモン牛乳」を復活させるも、昨今のような注目は浴びず、1年余で製造を打ち切り。商機の生まれた今、再度挑戦の可能性はあるそうだ。
◆掲載ビンについて
(2)番瓶「やっぱり牛乳はタカハシと定評」の宣伝文句が、手前味噌な語りで面白い。その下に添えた「ひかげにおきましょう」も、なかなか風流な口上だ。
この瓶が流通したのは、ようやく各家庭に冷蔵庫が入り始めた時期。ちゃんと冷やして置いてくれと頼んでも、冷蔵庫が無ければ生鮮食品の厳格な温度管理は難しい。昨今の「要冷蔵・10℃以下」を柔らかく表現すれば、そんな感じになるだろうか。
― 関連情報 ―
タカハシ乳業の紙栓
(牛乳キャップ収集家の活動ブログ) / 同・紙栓
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(乳業探訪記) / 同・紙パック製品
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