アルプス牛乳 (1)アルプス牛乳 (1) アルプス牛乳 (2)アルプス牛乳 (2)
アルプス牛乳 (1)

アルプス牛乳(有)
長野県上田市下紺屋町3390
石塚硝子製・市乳90c.c.側面陽刻
昭和30年代初期
アルプス牛乳 (2)

アルプス牛乳(有)
長野県上田市下紺屋町3390
大和硝子製・正180ml側面陽刻
昭和30年代中期〜後期

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戦後に15年ほど商われた、県東のローカル銘柄。往時は低温殺菌の白牛乳ひと筋、瓶に見ゆるは南アルプスの山脈。昭和41年頃に自家処理より撤退され、ブランドは消滅。以降は森永乳業協同乳業(名糖)ほかの販売店さんとなっている。

◆アルプス牛乳を商った3社について

掲載ビンは電話番号から、上田市のアルプス牛乳(有)さんで間違いない。しかし県下にはもう1社、松本市にアルプス牛乳(株)が存在した。こちらは昭和33年に協同乳業が買収、同・島立分工場に転換。稼働数年で閉鎖されている。

さらに富山県富山市には、アルプス乳業(株)もあった。景品のコップを確認すると、特徴的な「アルプス牛乳」のロゴタイプが、上田アルプスと瓜二つだ(瓶装は未見)。

アルプス牛乳のノベルティーコップ (牛乳グラス☆コレクション)
  ※コップの電話番号3428や3011は、いずれも富山アルプスさんのもの

富山アルプスは昭和40年に全事業を売却、ヤクルト北陸乳業(ヤクルト牛乳)に変わる。上田アルプスと富山アルプスの社長さんは別人で沿革も異なり、松本アルプスは昔の経営者さんのお名前が分からない。3社には何か関係がありそうだが、詳細は不明だ。

◆上田アルプスさんの商品展開

(1)番は昭和30年代初期まで使われた五勺びん(90cc)。ガラスの肉厚は不均等、大きな気泡も混じる古風な作り。朽ち果てた残存キャップに「市乳 75℃-30分殺菌」の文字が見えた。東京の片平牛乳さんと同様な、小口径乳栓+印刷ビンの希少例と思う。

後継(2)番の一合瓶(180cc)に切り替え前は、五勺びん詰めだけの製造といい、これは全国的に珍しい展開。県下では小諸牛乳さんが同時期に同様の商いだったらしい。長野には90cc存続商圏とでも言うべき地域特性があったのか?

戦前の牛乳は高価な嗜好品。幼児・病人向け滋養飲料の側面も強く、標準容量が五勺の時代は確かにあった。ただ、印刷ビンが普及し始める昭和30年代には、既に一合入りが当たり前。(1)番瓶は過渡期ただなかのアイテムだろう。

― 謝辞 ―
上田アルプスさんの仔細など、kazagasira様よりご教授・ご協力頂きました。

― 関連情報 ―
アルプス牛乳の紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)


■長野県上田市・アルプス牛乳(有) <掲載瓶>
設立> 不明ながら戦後
昭31> アルプス牛乳(有)・柴田富松/長野県上田市下紺屋町3390
昭34〜40> アルプス牛乳(有)/長野県上田市3390
電話帳掲載> 「アルプス乳業」「森永牛乳花園販売店」/長野県上田市中央4-13-16
自家処理撤退・独自銘柄廃止> 昭和41年前後
公式サイト> 未確認

■長野県松本市・アルプス牛乳(株) <参考>
設立> 不明ながら戦後
昭33> 協同乳業に買収され、同・松本工場の島立分工場に転換
昭34> 協同乳業(株)島立工場/長野県松本市島立3297
独自銘柄廃止> 昭和33年頃
工場閉鎖> 昭和36年前後?
電話帳掲載・公式サイト> 未確認

■富山県富山市・アルプス乳業(株) <参考>
設立> 昭和27年
昭31> アルプス牛乳(株)・奥沢友作/富山県富山市東田地方12
昭34〜36> アルプス乳業(株)/同上
昭39〜40> アルプス乳業(株)・山岡政次/富山県富山市金泉寺255
昭40> 富山ヤクルト販売(ヤクルト牛乳)へ全事業を譲渡?
事業売却・独自銘柄廃止> 昭和40年頃
廃業> 時期不詳
電話帳掲載・公式サイト> 未確認

処理業者名と所在地は、全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版・[特定商工業者名簿1963] による。電話帳の確認は平成19年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



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