小諸牛乳小諸牛乳

(記事下段)

小諸牛乳

小諸牛乳共同処理所(大森治雄)
長野県小諸市甲2780
東洋ガラス製・正180cc側面陽刻
昭和50年代後期〜平成5年頃

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昭和2年、古くは明治時代からの老舗を含む、地元3軒の牛乳屋さん(搾乳販売業者)が、ミルクプラント集約と共販体制の確立を期し、小諸牛乳組合を発足。以来およそ80年に渡って市域に商われたが、平成20年に廃業。銘柄は消滅した。

掲載は昭和後期〜平成初年に流通の一本。最終世代のビンもほぼ同じレトロなデザインだ。戦前戦後の一時期は、北佐久牛乳商業協同組合の名乗りで「北佐久牛乳」を展開。県下には同様の産業組合が多数あった。(⇒関連:山本牛乳

◆小諸牛乳の栄枯盛衰

最盛期は昭和30年代、日配3千本。平成に至って活況は既に遠く、需要減、設備老朽、店主の高齢化に直面。長年の得意先に惜しまれつつ、廃業を決断。色物(コーヒー・フルーツ)や加工乳は扱わず白牛乳のみ、晩年出荷は一日800本ほどだった。

小諸牛乳80年の歴史に幕 (asahi.com マイタウン長野)
小諸牛乳、近く80年余の歴史に幕 地元の味惜しむ声 (信濃毎日新聞)

他社筋の継承・ブランド存続は検討止まり。平成9年に大森治雄氏の個人経営に変わっていた小諸牛乳は消滅、工場解体の見通しのなか、いくつか余談が生まれる。

◆農業高校で小諸牛乳が復活?

廃業予定の6月当月、新聞の地域欄や地元紙が小諸牛乳の店仕舞いを報じると、北佐久農業高校さん(佐久市)が製造ライン一式の譲渡希望を申し入れ、これが実現。空き瓶や通い函といった資材も全部引き取る運びとなった。

北佐久農業高が活用 廃業した小諸牛乳の設備 (信州Liveon)

学校に据え付け、実習授業を通じ小諸牛乳の復活まで視野。大森氏ご夫妻は同校OB。機器の売却先は決定済みのところ、連絡を受けたご主人は即断快諾。

その電話の30分後には校長・先生方が工場に向かい、乳機の操作確認や譲渡品目・搬送方法の相談を行った。廃業予定を知って現地訪問した牛乳キャップ収集家のkazagasira氏は、偶然この場に居合わせ、異例の急展開に驚いたそうだ。

◆高校における過去の製造販売

昭和40年代、北佐久農高さんは製造実習用の処理施設を運営、校内外に牛乳を売っていた。しかし機械の故障頻発で、昭和50年頃に中止したらしい。

いっぽう乳牛飼育は継続。学校直営の菱池農場にホルスタイン/ジャージー/ガーンジーほか各種を繋ぐ。生乳は付近のメーカーへ出荷。実習は搾乳に限り、校内の市乳処理を断念の状況で、全国的な傾向だ。(⇒特集-農業高校の牛乳

小諸牛乳の機材確保後、続報はない。平成27年、北佐久農高は佐久平総合技術高校・浅間キャンパスに転身。生物サイエンス科(食料マネジメント科)に畜産を含むが、同28年の科目改編時には「校内牛乳処理室の解体工事」を実施している。

◆ミルクプラント建屋の一部保存

設立当初「小諸牛乳組合」の文字を扉の曇り硝子に残す、戦前出来の古き良き牛乳工場は、大森氏ご家族の尽力で、移築を前提に一部が保存された。

将来的には資料館開設の構想もあり、農高の牛乳復活ともども、実現すれば大きな話題になりそうだが、先行きは不明。全国で地場中小乳業の廃業・撤退相次ぐなか、小諸牛乳さんは一旦休憩に過ぎない感じで、今後の動向に期待したい。

― 謝辞 ―
「小諸牛乳」さんの仔細ほか、kazagasira様よりご教授・ご協力頂きました。

― 参考情報 ―
北佐久牛乳共同処理所(小諸牛乳)の紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
同・紙栓 (牛乳キャップとは) / さようなら小諸牛乳そして有難う (花あそび・言葉あそび)
さよなら「小諸牛乳」 (浅間太郎の異次元の小諸であそぼ)


創業> 大森作次氏の開業は明治期?
設立> 昭和2年、小諸牛乳組合として ※地元酪農家(牛乳屋)3軒の合同
昭09> 大井洸、荻原金太郎、小泉肇、大森竹次/長野県北佐久郡小諸町
             ※小諸町に4名の牛飼いが記録される。当初の組合代表は大井氏、
                 最終的な継承者が大森作次氏のお孫さん(竹次氏のご子息)・治雄氏。

昭29> 小諸町は周辺4村との合併をを経て小諸市となる
昭31> 小諸牛乳共同処理場・大井洸/長野県小諸市丁734
昭34〜39> 小諸牛乳協同処理場(共同処理所)/長野県小諸市甲2780
昭40〜44> 同上/長野県小諸市旭町甲3915
昭46〜50> 同上/長野県小諸市旭町甲2980
昭53〜平01> 同上/長野県小諸市甲2780
平04〜13> 同上/長野県小諸市荒町2-1-7 ※平成9年、大森氏の個人経営に転換
電話帳掲載> 小諸牛乳/同上 ※平成19年時点
廃業> 平成20年
公式サイト> 未確認

処理業者名と所在地は、牛乳新聞社「大日本牛乳史」・全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



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