すゞらん牛乳 (1)すゞらん牛乳 (1)
すゞらん牛乳 (1)

赤穂農業協同組合
長野県駒ケ根市赤穂14945
石塚硝子製・正180cc側面陽刻
昭和30年代後期〜40年代初期

すゞらん牛乳 (2)すゞらん牛乳 (2)すゞらん牛乳 (2)
すゞらん牛乳 (2)

赤穂農協⇒伊南農協⇒上伊那農協すずらん(株)
長野県駒ケ根市赤穂15135-15
ユニオン硝子工業製・正200cc側面陽刻
昭和40年代後期〜50年代中期

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上伊那郡赤穂町(現・駒ヶ根市)の赤穂農協が、昭和24年にミルクプラントを開設、以来およそ70年に渡って商われるローカル銘柄。「すずらん」の銘は旧・赤穂町章に由来。現在ご当地には直売所・処理工場の「すずらんハウス」があり、観光拠点ともなっている。

◆掲載ビン・新旧の瓶装について

掲載は創始・赤穂農協と、第一次合併を経た伊南農協(後述)時代の2本。後継品は4世代。農協マークの部分を「すずらんのイメージ」あるいは「JAマーク」に置き換えた2種と、緻密なラインアートで花や牧場風景を描いた、現代風デザインの2種だ。

すずらん牛乳(1) / 同・(2) / すずらんコーヒー200mlビン (牛乳トラベラー)
すずらん牛乳 (気が重いよ…伊那篇)
木曽駒ケ岳「番外編」と駒ヶ根周辺観光 (バイク乗りの絵日記)
アルプスを望むまち・駒ケ根を遊ぶ!<3> (しあわせ信州)

新旧瓶装のイメージ写真・「すずらんハウス」商品カタログより
画像上:新旧瓶装のイメージ写真・「すずらんハウス」商品カタログより…左は昭和40年代中期、真ん中と右は平成5年〜17年頃か(先後不明)。蓋は当時物ではない。

酪農家の廃業増加と、消費減退の煽りで採算悪化し、平成27年に瓶詰めアイテムを大幅削減。「すずらんコーヒー」は撤廃、現行は白牛乳900ml大瓶のみ。180mlビン「すずらん牛乳」は、カタログ上“限定商品”の位置付けで、普段は作っていないようだ。

◆旅人に始まった町の牛乳屋さん

町域における搾乳業の嚆矢は、赤穂月花町の板倉牛乳店、開業は明治20年頃。[赤穂の酪農](昭和35年)によると、経営は「旅の人」というだけで、沿革も去就も良く分からない。牛乳屋さんの発祥は色々あるが、こんな話は初めてだ。

のち5〜6軒が営業も、需要散漫や戦時の価格統制を受け、全て大正〜昭和初期に閉業。しかしこの間、業者の預け牛とか厩肥・農耕用に、乳牛を入れる農家が増えてきた。

◆戦中〜戦後の酪農発展

昭和20年、食糧事情の逼迫に応じて農業会は乳牛導入を斡旋、赤穂酪農組合が発足。森永乳業松本工場も積極支援し、基盤形成に貢献。郡下の畜産発展につれ、伊那町には諏訪産業(⇒保証牛乳グループ)が練乳工場を置き、俄かに活況を呈す。

赤穂の酪農家は原料乳出荷のみならず、生産直売を志向。行政に町営ミルクプラントの設置を求める。役場の直対応は難しい案件ながら、酪農振興を図る立場で検討に入った。

◆赤穂農協による「すずらん牛乳」の創始

各者協議のすえ、赤穂町農業会の事務を引き継いだ、赤穂農業協同組合が処理工場の開設を決定。昭和24年、従業員わずか2人で操業開始。翌25年、町章でもあった赤穂のシンボル・鈴蘭にちなんで商標を「すずらん牛乳」とし、今に残る伝統の銘が生まれた。

工場を新築移転した昭和37年の実績は、日産3,500本ほど。販路は宅配や病院向けがメイン。規模は漸次拡大していくが、全国的に見るとやや低調に推移した。

ちなみに同銘採用のメーカーがもうひとつある。群馬県吾妻郡長野原町の北軽井沢開拓農協(現・あがつま農協)は、昭和47年前後の廃止まで「スズラン牛乳」を商っていた。

◆学校給食用委託乳の展開と終息

学校給食への参入は昭和42年。脱脂粉乳から生乳100%移行にともなう抜擢で、商売に弾みがつく。最盛期は平成4年頃、宅配が3,000、給食で4,000、病院・商店・生協店舗や高速SAの小売りも合わせて、日産8,500本を記録した。

平成13年には規制緩和・給食事業要綱改正の煽りを受け、学乳契約は入札制となり、あえなく敗退。一時は大手メーカーの製品が出回ったところ、児童・保護者の強い要望を得て、関係各位が調整努力に臨み、「すずらん牛乳」が復活の一幕もあった。

町民に親しまれ、工場の規模を支えた学校給食向けの出荷だが、少子化による需要減退と生産コスト高騰には抗えず、平成20年に完全撤退されている。

◆農協の変遷と現行アイテムについて

赤穂農協は昭和47年、周辺7組合と合併して伊南農協に進展。平成8年には上伊那エリア5組合の合併で、現在の上伊那農協が発足。同時に農協の第三セクター「すずらんハウス」(すずらん株式会社)を設け、今は同社が「すずらん」ブランド乳製品の製造を担う。

売上減少の苦境を打開すべく、白牛乳一辺倒のラインナップを見直し。のむヨーグルト、すずらんソフト、すずらんコーヒー、ミルクジャムほか新商品を逐次投入。宅配・小売を強化の方針で、瓶詰め縮小前、平成25年の市乳日産は2,400本だった(180〜900ml合算)。

― 参考情報 ―
かみいなの畜産 / 歴史と遺産-前史 (JA上伊那)
新鮮濃厚!すずらん牛乳の魅力 (る〜らるコミュニティ@Youtube)

― 関連情報 ―
伊南農業協同組合の紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
上伊那農業協同組合「すずらん牛乳」 (愛しの牛乳パック)
すずらん牛乳ソフト (ながの!ながの!ながの!)
駒ヶ根市のすずらん牛乳 その2 (応援します!!地域ブランドづくり@長野県)


設立> 昭和23年、赤穂農業協同組合として ※翌24年、市乳事業を開始
昭29> 赤穂町は周辺3町村と合併し、駒ヶ根市となる

昭31> 赤穂農協・北原金平/長野県駒ケ根市赤穂15,382
昭34〜40> 赤穂農業協同組合/長野県駒ケ根市赤穂14945
昭41〜46> 同上/長野県駒ケ根市赤穂15-35
昭47> 上伊那南部の7組合が合併し、伊南農協となる
昭47〜48> 伊南農業協同組合/同上
昭50> 同上/長野県駒ケ根市赤穂15135-15
昭51〜平01> 伊南農協すずらんミルクプラント/同上
平04> 同上/長野県駒ケ根市東町9-35
平08> 上伊那地域の5組合が合併し、上伊那農協となる
           同時に第三セクター「すずらんハウス」が発足

平13> すずらんハウス上伊那農協/長野県駒ケ根市赤穂759-446
平14> すずらん(株)を設立、すずらんハウス運営を継承
電話帳掲載> 「JA上伊那 駒ヶ根支所 すずらん牛乳」「すずらん(株)」
                   /長野県駒ヶ根市赤穂北割一区759-446
公式サイト> https://www.ja-kamiina.iijan.or.jp/ (上伊那農協)
                 http://www.suzuran-h.co.jp/ (すずらん株式会社)

処理業者名と所在地は、全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。電話帳の確認は平成29年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



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