小林ミルク小林ミルク

(記事下段)

小林ミルク

(株)小林ミルクプラント
長野県北佐久郡軽井沢町1176
石塚硝子製・正180cc側面陽刻
昭和30年代中期

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沿革不詳ながら、戦前にご創業の地場メーカーさん。昭和35年、八ヶ岳酪農協同(現・八ヶ岳乳業)と提携し、同・軽井沢工場に転換。独自銘柄は消滅。

のち工場は雪印乳業の直営に変わり、昭和42年に県外へ移転。群馬雪印牛乳(株)の新設に至るも、集団食中毒事件の余波で平成15年に解散、工場は閉鎖となった。

◆原乳不足から八酪と提携

かつての小林ミルクは自給原料に乏しく、必要に応じて協同乳業(名糖牛乳)の岩村田分工場より補給を受ける友好関係にあった。ところが昭和35年の夏、牛乳が最も売れる季節に、一帯は深刻な生乳不足に陥る。協乳は小林への送乳を大幅に減らした。

周辺の駅構内で直売のほか、複数の特約販売店も擁する小林ミルクは、原料調達ができず困窮。その際、ちょうど同エリアへの進出、生産・営業拠点の確保に乗り出していた八ヶ岳酪農協同(雪印系列)の社員と知り合い、原乳の斡旋を願い出る。

八酪は請け負いで作っている雪印牛乳(完成品)を卸すことで不足分を補う約束をし、とりあえず「小林ミルクプラント経由の雪印牛乳」が市中に出回ることとなった。

◆雪印・軽井沢工場への転換

小林ミルクは当初、少量の手持ち原料を用い自社ブランド存続・雪印との併売を希望したが、最終的には八酪の軽井沢工場(受託専門)に転じる。八酪は設備増強・技術指導を行い、また小諸・上田・長野の各市に拡販を試み、一定の成果を得た。

しかし商圏が広がるにつれ、付け焼刃的な小工場では加工が追い付かず、労使関係や品質管理の諸問題が噴出。八酪は採算に不安を抱き、小林ミルクも雪印の直轄経営を望んだため、昭和37年に全事業を委譲。以降は雪印の軽井沢工場として操業した。

◆群馬雪印牛乳への進展〜解散

とはいえ従前の諸問題は残る。根本解決を図り、昭和42年に軽井沢工場は閉鎖。小林ミルクは雪印の出資を仰ぎ、群馬県佐波郡に工場を新設。群馬雪印牛乳(株)を立ち上げた。

新会社は順調に伸び、県下上位の処理量で推移。やがて雪印の100%子会社となり、体制盤石も束の間。平成14年、集団食中毒事件が発生。グループ再編の煽りで稼働停止、物流センターへの転用検討も実現ならず、翌年に群馬雪印は解散した。

軽井沢側の拠点は群馬雪印の本社(旧・小林ミルクプラント)だったようだが、同時期に廃止されたと思う。当地は軽井沢駅〜矢ヶ崎公園にほど近い一等地、現状は不明。

◆掲載びん・バターの扱いについて

瓶のイラストは、噴煙をなびかせる浅間山の趣向だ。小林ミルクなので小林バターとなりそうなところ、KARUIZAWA BUTTERなる別ブランドの宣伝が載っている。

名前からして、バターは近在の軽井沢町農協(軽井沢牛乳)の代理店・仕入れ販売の形と想像したが、のちお寄せ頂いた情報によると、自社加工品だったらしい。バター製造には大量の原料が要る。恐らく冬季の余剰乳を用いたものだろう。

― 謝辞 ―
小林ミルクの創業期やバター製造の有無など、小林様よりご教授頂きました。

― 関連情報 ―
雪印乳業子会社の群馬雪印牛乳が解散 (日本食糧新聞)
群馬雪印牛乳の紙栓(1) / 同・(2) (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
同・紙栓 (牛乳キャップとは) / 企業情報-沿革 (大塚食品)


■小林ミルクプラント
創業> 不明ながら戦前
大14> 小林治三郎/長野県北佐久郡軽井沢町 ※関連不詳
昭31> 軽井沢ミルクプラント・小林伴治/長野県北佐久郡軽井沢町1178
昭33> (株)小林ミルクプラントを設立
昭34> 小林ミルクプラント/長野県北佐久郡軽井沢町1176
昭35> 八ヶ岳酪農協同と提携、雪印ブランド製品の受託製造・販売を開始
昭36> 八ヶ岳酪農協同(株)軽井沢工場/同上
昭37> 八ヶ岳酪農協同との提携を解消、全事業を雪印乳業へ移管
昭39> 雪印乳業(株)軽井沢工場/同上
昭40〜42> 同上/長野県北佐久郡軽井沢町1198
工場閉鎖> 昭和42年 ※県外に新会社(群馬雪印牛乳)・新工場の開設による
独自銘柄廃止> 「小林」銘は昭和35年に廃止
電話帳掲載・公式サイト> 小林ミルクプラントとしては未確認

■群馬雪印牛乳
設立> 昭和42年 ※小林ミルクプラントと雪印乳業の共同出資
昭43〜48> 群馬雪印牛乳(株)/群馬県佐波郡玉村町大字板井160
昭50〜平13> 同上/群馬県佐波郡玉村町大字板井162
平14> 雪印グループの再編計画により、製造業務を中止
平15> 工場(物流倉庫)跡地は群馬大塚食品(株)に売却される

電話帳掲載> 東京雪印物流(株)高崎営業所/同上 ※平成12年時点
                   群馬雪印牛乳(株)/群馬県佐波郡玉村町板井165-2 ※平成12年時点
                   群馬雪印牛乳(株)物流課/群馬県佐波郡玉村町板井10 ※平成12年時点
                   大塚食品(株)群馬工場/同上
会社解散・工場閉鎖> 平成15年
公式サイト> 群馬雪印牛乳としては未確認

処理業者名と所在地は、[軽井澤町報]・全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。電話帳の確認は平成23年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



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