田村牛乳(愛光舎)田村牛乳(愛光舎)

ストローを挿した牛乳瓶を、ぐっと掲げる坊やのアイコンが愉しい一本。近年のCIと思いきや、古びた宅配受箱も同じ絵で、案外ベテランか。

創業は昭和6年、現役のローカル乳業さん。平成25〜26年頃?に瓶詰めを廃止、今は紙パックのみをラインナップする。

自社ブランドのほか、「森永庄内ミルクセンター」として森永乳業製品も併売。地元の病院や保育園、小中学校が主な販路らしい。

田村牛乳

愛光舎田村牛乳店
山形県酒田市亀ヶ崎5-6-57
東洋ガラス製・正200cc側面陽刻
昭和60年代〜平成5年頃?

◆愛光舎田村牛乳店の名乗りについて

屋号「愛光舎」の由来が気になるところ。明治後期、東京府下に誕生した同名の牧場は、戦前の酪農・乳業史に必ず言及される先駆、大規模牧場。全国各地に「預け牛」制度を敷いたため、何らかの繋がりがあって不思議はないが…。

■愛光舎牧場 (東京府豊島郡巣鴨村⇒板橋区板橋町/神田区三崎町)

明治32年、医師・クリスチャンの角倉賀道氏が創業。天然痘ワクチン製造のため牛飼いを始め、渡米視察を経て翌33年に市乳事業へ進出、酪農先進国に倣って蒸気殺菌牛乳を売り出す。飼育と搾乳は巣鴨で行い、販売所を神田に置いた。

明治38年、輸入ホルスタインほか乳牛300頭を囲う大宮種牛牧場(埼玉県北足立郡大宮町)を開設。繁殖と改良、種牛分譲を行うとともに、東京・神奈川・千葉・山梨・静岡・北海道へ、計8000頭超の仔牛育成を預託、各地の酪業普及に貢献した。

愛光舎・牛乳飲用の栞 (国立国会図書館デジタルコレクション)
こぼれ話…100年前の絵はがき (北海道ホルスタイン農協-ホルスタイン通信)
我が国のジャージーの歴史 (日本ホルスタイン登録協会-機関紙)

大正2年、巣鴨の牧場は板橋競馬場の跡地(板橋区板橋町)に移転。戦時は休業状態らしく、昭和15年以降出来の統制団体、東京牛乳卸同業組合や東京乳業(株)にはお名前が見つからない。この間は規模縮小しながら乳牛飼育に専念したのだろうか。

戦後、板橋の拠点は乳酸菌飲料やヨーグルト、生クリームの製造工場に変わり、(株)愛光舎として昭和40年代まで操業。のち雪印牛乳の販売店に転換。今なお「(有)愛光舎」「メグミルク愛光舎販売店」(板橋区栄町)がご当地に営業を続ける。

(株)愛光舎工場の紙栓 (もぐら)
石神井川(中根橋から板橋まで) (越後屋たぬき)

神田の拠点も健在。板橋に同じく雪印販売店を永く営んだ後、現在はハンバーガーショップ「I-Kousya」に衣替え。ご商売は違えど伝統の屋号は引き継がれた。

宅配牛乳歴史資料館-第3回 味と品質編 (全国牛乳流通改善協会)
水道橋 アイコウシャ (桃猫温泉三昧) / 愛光舎ビルのグルメバーガー (はらへり*てんき)
ON THE STREET BURGER〜I-Kousya (APIO-ジムニーライフ)

本項の田村牛乳さん以外にも、「愛光舎」の名を冠した古い牛乳屋さんが何軒かある。東北・関東に多い。いずれも東京愛光舎との繋がりは不明。

■愛光舎工藤牧場 (宮城県仙台市中島)

大正2年、工藤友蔵氏が創業。明治中期から同地にあった、塚田牧場の諸権利を買い受けて始めた所だという。昭和32年に廃業している。

牛越橋のたもとで、50年前の風景をさがす (広瀬川の記憶)
広瀬川の河原で、のんびりと牛が草を食んでいた (同上)
アメリカ人が撮った日本の鉄道 (デブデブ食ッカー)

■愛光舎 (福島県伊達郡長岡村)

大正12年、阿部國英氏が創業。自家搾乳・自家処理にて牛乳販売を行ったが、戦後は請け売りに転換。現在は「愛光舎森永牛乳販売店」(伊達市北後)として営業中。國英氏はクリスチャンで、過去の[日本基督教団年鑑]にもお名前が載っていた。

愛光舎 (小国フォルケ・ホイスコーレ)

■愛光舎市乳合名会社 (茨城県日立市久慈町新宿)

沢畑碩亮氏による経営、創業沿革は不詳。少なくとも会社法人は戦後の設立。昭和30年代後期に廃業した。旧久慈郡久慈町あたりの業者が合同したものと思う。

■愛光舎 (神奈川県茅ヶ崎市茅ヶ崎)

青木房次郎氏による経営、創業沿革は不詳。昭和34年前後に廃業している。神奈川は東京愛光舎の預託エリアのひとつで、いかにも関係ありそうだが…。

◆東京愛光舎より派生した搾乳業者

東京愛光舎の預託牛が乳業創始の端緒、あるいは同舎での勤務経験を活かして郷里に独立開業を果たすケースは、過去複数あったはずだ。唯一確認できるのは、明治38年に創業した村山米策氏の「新潟健康舎」で、後者の実例である。

新潟港の近代化についての一考察 (長岡大学-研究論叢・第11号)

「愛光」は(特にキリスト教界隈で)定番に近いフレーズ、異業種にも散見される商号。「たまたま被ってしまった」とか「有名所にあやかっただけ」とか、そんな単純な一致に過ぎない場合もあるだろう。各事情が判明次第、適宜追記していきたい。

― 関連情報 ―
田村牛乳のキャップ (牛乳キャップ収集家の活動ブログ) / 田村牛乳の情報 (ごった煮)
田村3.5牛乳200mlビン / 同・200mlパック (牛乳トラベラー) / 田村牛乳 (乳業探訪記)


創業> 昭和6年
昭31> 愛光舎田村牛乳店・田村栄蔵/山形県酒田市最上町80
昭34〜41> 愛光舎田村牛乳店/同上
昭42〜56> 愛光舎(田村牛乳店)/山形県酒田市亀ヶ崎5-6-57
昭58〜平13> 愛光舎(田村牛乳)/同上
電話帳掲載> 同上
公式サイト> 未確認

処理業者名と所在地は、全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。電話帳の確認は平成19年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



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