沖縄本島の南部、南風原(はえばる)村にあった往年のローカル銘柄。掲載は返還前、昭和43〜46年頃に流通の一本か。既に「要冷蔵」の標示義務が生じていた本土と異なり、該当の注記は見られない。ベスト牛乳(1)番瓶や大川牛乳と同じ例だ。
◆与那覇に新垣さん2銘柄が営業
地元のガラスびん収集家・名護氏の現地情報、および複数の業界名簿を参照すると、与那覇にはかつて親戚関係にある2軒の牛乳屋さん(牛舎併設乳業)が並存。創業の後先は不明ながら、本項のビンは新垣店助氏が商った品になるようだ。
| |
新垣牛乳(新垣善光氏、“まる善”の屋号)/島尻郡南風原村字与那覇1
新垣乳業(新垣店助氏、“まる新”の屋号)/島尻郡南風原村字与那覇350-2 | |
新垣乳業・店助氏は、昭和47年前後に自家処理を中止のご様子。代替わりを経てなお牛飼いは継続されたが、現況不明。いっぽうの新垣牛乳・善光氏も、49年前後に直販より撤退。新垣ブランドは両者廃止に至っている。
◆調べにくい沖縄の乳業事情
全国の牛乳工場(メーカー)を網羅した住所録は、業界誌[全国乳業年鑑](食糧タイムス社)が、唯一無二の有力な資料だ。しかし返還後「沖縄県」の項目追加は昭和49年版から。前年集計・同48年時点の名簿データである。
沖縄には中小ミルクプラントが数多く操業も、米軍占領期の情報に乏しい。往時の乳業史の大半は国外扱いでフォロー及ばず、手元で県下全体を俯瞰できる名簿は戦前で昭和9年時点、戦後は46年・48年集計分まで一気に飛んでしまう。
― 謝辞 ―
新垣乳業さんの仔細につき、向名館(こうめいかん)・名護様よりご教授頂きました。