御蔭牛乳御蔭牛乳

(記事下段)

御蔭牛乳

御蔭ミルクプラント
群馬県渋川市御蔭3788
石塚硝子製・正200cc側面陽刻
昭和50年代〜平成5年頃

地元の牛飼い有志が昭和3年に産業組合(のち酪農組合)を結成。自ら処理工場を構え、直売に臨んだ県央のローカル銘柄。発足経緯や市乳事業の沿革は不詳。一帯は近代の開拓地で、入植・開墾の労苦が伝わる。

平成11〜12年度の乳業施設再編合理化に応じ自家製造を中止。以降は吾妻郡の豊田乳業さんへ処理を委託。21年前後に沼田市の貝瀬ミルクプラントさんに振り替え。同26〜27年頃、再び豊田さん方の請け負いに戻っている。

◆岸氏のリンゴ畑、腸チフスで頓挫

渋川はリンゴを筆頭にイチゴ、さくらんぼ、ブルーベリーなど果樹栽培が盛んな土地柄だ。その歴史は古く、遡って明治18年、岸漣平氏が折原(御蔭)3769番地(後年の御蔭ミルクプラント所在)一帯の山林を開墾、リンゴの作付けを試みたことに始まるという。

試行錯誤の10年間を乗り越え好調も束の間、明治29年、岸さん一家8人全員が腸チフスでダウン。果樹の手入れままならず、収穫は僅かな量に留まり、それさえも防疫のため売買禁止。収入ゼロの苦境に陥って、やむなくリンゴ園を手放した。

◆高瀬氏による承継と酪農へのシフト

果樹園を引き継ぐのは、近郊の名家出身だった高瀬平五郎氏。伊香保温泉への旅行中、たまたま売り出し情報を得て購入を決断。ご子息・常三郎氏らとともに桃やリンゴの栽培に挑んだ。ところが樹木の病害虫被害が甚だしく、減反を強いられる。

そこで大正13年、遊休地での乳牛飼育に着手。やがて家業の中心は酪農に移っていった。戦後、酪農組合の長を務めたのは高瀬松一郎氏で、続柄は不明ながら縁者の人だろう。なお岸氏は、のちに桃の栽培で成功、見事カムバックを果たしている。

◆皇太后行啓「御蔭の松」の由緒

瓶の真正面に堂々と、力強く枝を張る松のシルエット。由来は皇室のご縁だ。明治12年、英照皇太后(孝明天皇の女御)が伊香保行啓の際、渋川村に投宿。明けて伊香保までの道、芝中という場所でご休憩。ここに地元通称「一本松」が生えていた。

盛夏の折、樹下に涼を取った皇太后は、老松の風貌を絶賛、帰路にも立ち寄る。以来この木は「御蔭の松」と呼ばれ、一帯に「御蔭」の地名が浸透。数奇な後日談は明治29年、皇太后が崩御すると老松は樹勢を失い、大正7年に枯れてしまったという。

村は長く記念すべきと、枯れた枝葉を掃って幹を残し、柵と屋根で囲って保存に努めた。そして平成の現在も渋川市の御蔭公園(ミルクプラント至近)に、かつての巨木を偲ばせる松の幹と、その由緒を刻んだいくつかの石碑が立っている。

◆掲載びん・現行品などについて

壮健なりし頃の御蔭松をトレードマークにドンと据えた、迫力の一本、今も同様デザインで存続。この瓶は平成4〜5年頃、伊香保温泉に近い道の駅で購入した記憶がある。

ぶらり♪伊香保温泉 2013年3月18日 (超絶!みなとびより「港日和」)
白井温泉 こもちの湯(群馬県渋川市) (草津まるのまるまるなおはなし)

冒頭記載の委託過程で、日本唯一の乳酸菌飲料「パングルト」が消滅(フルーツに代替)。もとは他社専業筋の濃縮原液・広域ブランドだが、晩年の取り扱いは御蔭さんだけだった。

そのほか独自ブランド・びん製品は健在も、商流は良く分からない。すでに組合は解散、後述する高瀬氏の個人経営に変わって久しいと思う。現地には「御蔭園」(高瀬りんご園)も開かれ、毎年晩夏〜秋口にリンゴ狩り・直売が行われていた。

― 関連情報 ―
御蔭ミルクプラントの紙栓 / 同・OEM (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
同・紙栓 (牛乳キャップとは) / 御蔭ミルクプラントの情報 (ごった煮)
御蔭ミルクプラント(乳業探訪記) / パングルトを飲みました (プ吉の上州日記)
第16号特集「実はフルーツ王国・しぶかわ」 (ふるさと通信しぶかわ)


設立> 昭和3年、御蔭搾乳購買販売利用組合として
昭04> 御蔭搾乳購買販売利用組合/群馬県群馬郡渋川町大字折原3769
昭29> 渋川町は周辺3村と合併し、渋川市となる
昭31> 渋川酪農組合 御蔭ミルクプラント・高瀬松一郎/群馬県渋川市折原3788-1
昭34〜36> 渋川酪農組合 御蔭ミルクプラント/同上
昭39〜48> 御蔭ミルクプラント/群馬県渋川市3788
昭50〜59> 同上/群馬県渋川市御蔭3748
昭60〜平04> 同上/群馬県渋川市御蔭3748-2
平12> 乳業施設再編合理化により自家処理を中止、以降は製造委託
電話帳掲載> 御蔭牛乳/群馬県渋川市御蔭3769
公式サイト> 未確認

処理業者名と所在地は、[上毛産業組合史]・全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。電話帳の確認は平成19年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



漂流乳業