野島牛乳野島牛乳

(記事下段)

野島牛乳

野島牧場
和歌山県和歌山市本脇47
石塚硝子製・正180cc側面陽刻
昭和50年代

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恐らくは戦後、50年あまり市域・町域に商われたローカル銘柄。平成11年、学校給食向けの出荷で食中毒事故を起こし、間もなく廃業。県外資本である日本酪農協同(毎日牛乳)の分工場を除き、和歌山市内に唯一存続していた地場ミルクプラントだった。

掲載は昭和40〜50年代に流通の一本。四角瓶の前面に扇子と姫達磨、背面に牧場の景色をあしらう渋い構え。平成期までビン詰めは健在も、ラインナップ仔細は不詳。晩年は自社紙パック牛乳と、他社の乳飲料・ジュース類の併売を手掛けたらしい。

◆海草郡における乳牛導入は戦前から

海草郡は和歌山・大阪の市街地に通じ、県当局の奨励で酪農が伸びたところ。郡下には大正期に12の農乳組合が出来たほか、宮村に南海製乳(株)といった企業も現れている。

野島牧場さんの所在、西脇町(旧・西脇野村)には、アメリカ帰りの樋口佐五右衛門氏を中心とする、西脇野牛乳販売組合が発足。農家の乳牛飼育・生乳生産に弾みがついた。もしかすると野島さんの牛飼いも、発祥はこの頃に遡るかも知れない。

◆学校給食用委託乳のトラブル

平成11年3月、野島牧場さん製造の学乳(200ml紙パック)が原因の食中毒が発生。保健所の調査で冷凍サンプルよりO157を検出。牛乳の同汚染・感染は、国内初の事例だった。

学校給食の牛乳が原因と推定される腸管出血性大腸菌O157感染事例 (J-STAGE)
和歌山で牛乳からO-157 (学校給食ニュース-時事情報1999年)

原因菌の混入した製品は僅かに留まり、重傷者はゼロ。10日間の営業停止処分を受けた野島牧場さんはしかし、事態の重大性に鑑みて廃業を決断。ご商売にピリオドを打つ。

たぶん昔ながらのやり方で、数十年間大きな問題はなかったのだろう。とはいえ、食品衛生法(乳等省令)の定める、殺菌処理過程の自動記録装置(自記温度計)は未設置。要保存3ヶ月間の当該データも無く、運用に隙があったのは確かなようだ。

― 関連情報 ―
野島牧場の紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
野島牧場の宅配受箱 (牛乳トラベラー) / 同・宅配受箱 (むにゅ’s のぉと)
野島牛乳〜和歌山県和歌山市 (なおのブログ)


創業> 不明
昭31> 野嶋牧場・ 野嶋良市/和歌山県海草郡西脇町本脇68
             ※同年、西脇町は和歌山市に編入される
昭34〜36> 野島良市/和歌山県和歌山市西脇町本脇68
昭39> 野島利雄/同上
昭40〜44> 野島牧場/同上
昭46〜平09> 同上/和歌山県和歌山市本脇47
電話帳掲載> 野島利雄牧場/和歌山県和歌山市本脇47 ※平成10年時点
廃業> 平成11年
公式サイト> 未確認

処理業者名と所在地は、全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



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