戦前来の老舗が商った、県西部のローカル銘柄。沿革は不詳も、昭和53年前後に自家処理より撤退され、独自銘柄は消滅。以降は「伊井牧場」の屋号そのまま、他社ブランドを扱う販売店に転換。平成20年代初期、完全廃業に至った。
掲載は昭和30〜40年代に流通のオリジナル・2種3本。円形を大胆に配したデザインが際立つ黒瓶は、スタンダードな牛乳用。いっぽう赤瓶は標示の通り、コーヒーほかの色物と乳酸菌飲料・天洋グルト(後述)を詰めたものだったらしい。
◆天洋社薬品工業の天洋グルト
珍妙な語呂合わせが目を引く天洋グルトは、天洋社薬品工業(現・室町ケミカル、福岡県)の濃縮原液を使った製品。当時、ヨーグルトブームに乗ってメーカー各社が盛んに売り出した、無数の乳酸菌飲料(液状ヨーグルト)のひとつだ。
醗酵乳の原液を扱う業者さんは、ヤクルトのような広域展開を目指して全国にボトラーを募り、商標の利用権込みで卸売りを手掛けるケースが多かった。かつて伊井牧場さんは天洋社から原液を仕入れ、希釈・ビン詰め販売していたのだろう。
― 関連情報 ―
伊井牧場の紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)