恐らく戦後のご創業、当地に約70年の歴史を刻むローカル乳業さん。取り扱いは大小ビン製品のみ、市域の宅配専門。状況次第では工場直売も可。古い牛乳箱には「愛栄舎牧場」の名乗りも見え、自家搾乳にて商ったメーカーさんらしい。
「西宝」は往時の地名に由来。所在の三谷町は昭和29年の町村合併で蒲郡市となるが、それ以前は宝飯郡(ほいぐん)に所属。郡下を東西に分け、東宝/西宝地方と呼んだ名残り。「愛栄舎」も“愛知に栄える”とか、土地に根差した命名だろう。
掲載の一合瓶は前後で電話番号が異なる謎仕様。工場と事務所の使い分けか。現行瓶もほぼ同じデザインで存続。蒲郡界隈唯一のミルクプラントで、まさに町の宝だ。
◆「牛乳」の無い牛乳屋さんとして
種類別・加工乳(西宝ミルク)と乳飲料(西宝コーヒー)の2種だけをラインナップ、成分無調整の白牛乳がない。今や全国的に珍しい業態を貫く。前者は「西宝(ホモ)牛乳」の呼称が、平成13年の標示規約改正で「ミルク」に変わったものだ。
昭和20〜30年代、原料乳不足の折柄、消費者人気も手伝い、各地の乳業で同様の商品展開がなされた。しかし充分量の調達が容易になると、自然志向と相まって生乳100%が一般化。この流れに逆らい今日へ至った感じである。
「西宝ミルク」の乳脂肪分は、平成期まで3.0〜3.3%、普通の牛乳と同じくらい。現在は3.8%と若干濃厚路線。通常、加工乳は生乳に脱脂粉乳・バターやクリームを混ぜる。いっぽう西宝さんは生乳+全粉乳で調製されており、この点も昔ながらだ。
(追記)平成30年頃、ついに加工乳を廃止され、種類別:牛乳の「西宝牛乳」に切り替わった。成分無調整で乳脂肪分3.8%以上の原乳を調達可能なことから、もはや加工する必要もない、ということかも知れない。(⇒愛知県蒲郡市・西宝牛乳さんへ4度目の訪問/seinyusha@twitter) |
― 参考情報 ―
西宝牛乳の情報 (ごった煮) / 西宝牛乳
(乳業探訪記)
西宝牛乳の紙栓
(牛乳キャップとは) / 同・紙栓
(牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
西宝ミルク180mlビン (牛乳トラベラー) / 西宝牛乳の宅配受箱
(古今東西舎)
蒲郡・西宝牛乳
(自家焙煎珈琲喫茶スロース)