戦前に当地で創業以来、市域を中心に30年ほど商われたローカル銘柄。「牛島製酪」の商号が示す通り、牛乳のほかバター、アイスクリーム、練乳など各種乳製品の加工を手掛たほか、熊本駅構内で駅弁(サンドイッチ)の直売も行っていた。
[基督教年鑑](キリスト新聞社刊)の古い信徒人名録に、お名前が載っている。合名会社牛島製酪(牛島牧場)、代表社員・牛島三郎氏、副社長・牛島敏雄氏…恐らくご一族の協働経営で、クリスチャンの家柄だったらしい。
◆三愛主義の三愛牛乳
従って「三愛」は、【神を愛し、人(隣人)を愛し、土(祖国)を愛す】キリスト教の三愛主義由来に違いない。掲載瓶は表裏・計8文字で完結する淡白なデザインだが、可愛らしく跳ねた「三愛牛乳」のロゴタイプに、聖典の飾り字のような趣も感じる?ところだ。
三愛主義は、デンマークの宗教家NFS・グルントヴィ氏の提唱に基づき、クリステン・コル氏が創始した民間学校(フォルケ・ホイスコーレ=農民・民衆の高等学校)で掲げられた基本理念。その思想・運動は日本にも影響を与えたという。
◆活水女学校の校長先生
牛島製酪の副社長を務めていた敏雄氏は、昭和40年代に乳業経営を辞したのち、長崎県下のミッションスクール・活水女学校(活水中学校/高等学校)の校長/理事に就任。長く教育者としてご活躍の様子が伝わっている。
氏との交流・回顧談は、Webにも散見された。尼崎にある日本キリスト教団塚口教会の礼拝説教集は、敏雄氏の“証し”を紹介。「かつて熊本で牧場をしていた頃、我が子を不慮の水難で失い、信仰を新たにした」旨の、悲しい過去に触れている。
― 参考情報 ―
祈りの土台 (日本キリスト教団 塚口教会)
二つの街の物語-地域・大学・ミュージアム再生を求めて
(林重太のホームページ)
神を愛し、人を愛し、土を愛す3
(日本グルントヴィ協会)
活水学院(活水女子大学)本館
(ヴォーリズを訪ねて)