野村牛乳野村牛乳

(記事下段)

野村牛乳

野村乳業(株)
広島県安芸郡府中町鶴江2-12-27
石塚硝子製・正180cc側面陽刻
昭和40年代後期〜50年代

TwitterFacebookこの牛乳屋さんの記事を共有

広島市のお隣り、県南西部の安芸郡府中町に拠点を置く、創業120年余の老舗メーカー。明治30年の牧場開設に端を発し、「野村高等牛乳」の商い初めが大正3年。以来継承は三代に渡り、戦後、乳製品需要の増大に応じ相応の地歩を一帯に築いた。

昭和後期よりヨーグルト類のラインナップ増強に着手、平成23年前後に至っては牛乳・乳飲料の製造を打ち切り、発酵乳・乳酸菌飲料専業に転じている。最後まで残った市乳アイテムは、紙パックの牛乳・コーヒー牛乳の2種だった。瓶詰めは廃止されて久しい。

◆原点は初代・野村郁造氏の酪農業

今や一面の住宅街、僅かばかりの畑地を留めるだけの府中町にも、かつては典型的な農村の景色が広がっており、その中に野村牧場があったという。

しかし昭和35年頃を境に、広島市のベッドタウン化が急速に進行。牛飼いを続けることが難しくなり、間もなく併設牛舎での原料乳生産を断念。全ての乳牛は賀茂郡豊栄町(現・東広島市)の酪農家に譲渡移管、以降はミルクプラント経営に専念の格好となった。

工場の外観と配送トラック / 瓶装牛乳の充填の様子 (昭和30年代)
同じく瓶装牛乳の充填の様子 (昭和40年代) ※掲載と同じ瓶も見える。いずれも公式Twitterより。

◆新素材容器の早期採用と現今の業態

昭和39年にツーパック社製の紙容器を導入、同43年にはプラスチック容器の乳酸菌飲料を手掛けており、新しい包装技術の採用は全国的に見てもかなり早い。そうした流れにあって瓶詰めがいつまで残ったのか不明だが、平成初期には既に無かったようである。

過当競争状態で利幅の薄い牛乳類の市場を見限って、近年は広島大学との共同研究から生まれた、植物乳酸菌を用いる発酵乳が主力商品。機能性ヨーグルト/乳酸菌飲料に特化した業態に大きく舵を切り、独自性を高めることで家業の存続を果たしたということだろう。

― 関連情報 ―
野村乳業の紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
野村乳業株式会社・そ〜だったのかンパニー (TSSテレビ新広島)


創業> 明治30年
市乳事業開始> 大正3年
昭09> 野村廣/広島県安芸郡府中村
昭12> 府中村は町制施行する
昭31> 野村広/広島県安芸郡府中町
昭34〜39> 野村牧場/広島県安芸郡府中町563
昭40〜50> 野村乳業/同上 ※昭和39年に株式会社を設立も、しばらく未反映
昭51〜52> 野村乳業(株)/同上
昭53〜平13> 同上/広島県安芸郡府中町鶴江2-12-27
電話帳掲載> 同上
公式サイト> https://www.nomura-milk.co.jp/

処理業者名と所在地は、牛乳新聞社「大日本牛乳史」・全国飲用牛乳協会 [牛乳年鑑1957年版]・食糧タイムス社 [全国乳業年鑑] 各年度版による。電話帳の確認は令和2年時点。掲載情報には各種Webサイトや書籍資料(参考文献一覧)の参照/引用、その他伝聞/推測などが含まれます(利用上のご注意)。



漂流乳業