昭和60年頃まで、名古屋市内に操業していた牛舎併設メーカーさん。戦前より当地に酪農を営んだ老舗だが、既に関連する事業は全廃され、「北洋」銘は残っていない。
掲載は「北洋社」「小林牧場直売」、丸に三つ鱗(みつうろこ)の屋号をあしらった、昭和40年代流通の一本。過去資料や往時の紙栓は「北洋舎」とも表記する。
◆自家処理・オリジナル銘柄の展開について
確認できた一番古い記録は昭和9年、搾乳業・小林惣四郎氏として。時代を下り、昭和34年の電話帳を見ると「小林牧場(小林登氏)」と載っている。
いっぽう戦後の牛乳工場名簿では、昭和40年以降の掲載だ。恐らく運営期の過半は牛飼い・原料乳出荷のみを手掛け、ミルクプラント経営・直売を開始(戦時中断を経て再開?)したのが昭和40年前後…というような経緯だろうと思う。
◆牧場・処理工場跡地は「小林」ビル群へ
市乳事業より撤退後は、跡地の転用が進んだ。現在は烏森町5丁目25番地に「小林シュタイゲンハウス」、26番地に「アオキスーパー烏森店」(旧「スーパー小林」)、28番地に「小林ファミリートラストハウス」、39番地に「コバヤシミルクハウス」が建ち並ぶ。
いずれも賃貸マンション、貸店舗、住居兼商業ビル。名称からして小林牧場さんの物件に違いない。25番地の建物、入口附近の大きな銘板(表札)には「小林シュタイゲンハウス 1990-5/牛乳搾取処理販売業・不動産貸付業」の掲示もある。
とはいえ外観に牛乳屋さんの面影は皆無。本宅部分に加え、いくつか貸店舗(貸事務所)のスペースがあるようだ。シュタイゲンはドイツ語のSteigen(「上がる・昇る・登る」の意)。ご当主・小林登氏のお名前にひっかけたネーミングだろう。
― 謝辞 ―
kazagasira様より名古屋市の職業別電話帳の情報を頂きました。
― 参考情報 ―
北洋舎小林牧場の紙栓 (牛乳キャップ収集家の活動ブログ)
アオキスーパー烏森店 (マーケットピア)