往時の酪農史誌にはゲンキ(後の沖縄森永)や、沖縄明治(元・オキコ)に並ぶ乳業会社として言及されており、相応の規模感を持つローカルブランドだったようす。しかし集約統合の波には抗えず、昭和43年には沖縄森永乳業へ吸収され、銘柄は消滅した。
(2)番瓶に颯爽と登場する“マルサン坊や”はゲンキ君の対抗馬か?可愛いような、可愛くないような…微妙な味が滲む。胴体に相当する楕円が何だか無理やりである。
掲載は白牛乳専用の青瓶、色物(コーヒー・フルーツ)向けの赤瓶という使い分け、になるだろうか?
後者については晩年
全種をカバーする統一瓶装であった可能性もあるが、ラインナップ一切が不明なので何とも判断がし難い。「瓶の博物館」にも歴代の瓶が掲載されている。
琉球電信電話公社が昭和35年に発行した電話帳を見ると、「マルサンヨーグルト」という法人名で掲載されており、ゲンキ乳業と同じく創業時はヨーグルト(乳酸菌飲料)の製造販売からスタート、後に市乳事業へ着手した…様子が窺える。
◆等級標示が意味するもの
(1)番瓶“1級免許”の表現からも想像できる通り、沖縄の古い瓶(ゲンキ牛乳/オキコ牛乳/ヘルス乳業)に見られる等級標示は「製品の品質」というよりも、役所(占領軍・琉球政府)が「製造業者の資格(衛生状態の保証)」を認定するものであったらしい。
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折りしも当時の沖縄では「米軍公認店舗」を意味するAサイン(Approved、許可済の意)制度が施行されており、レストランやクラブ、バーが米軍関係者へサービスを供するためには必須の営業許可であったという。
画像左:「Aサイン」の店頭表示を許される、琉球政府発行の衛生基準適合証書。1965(昭和40年)の日付が書き込まれている。(ハイウェイ1の時代〜今も残る戦後沖縄より画像引用・加工)
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背景事情は「ハイウェイ1の時代〜今も残る戦後沖縄」―社交街、Aサイン地区、特飲街などに詳しいが、中には「許可施設・1級」を示す琉球政府発行の許可証自体を掲示するところもあり、これには“衛生基準に適合”の旨が和文・英文で添えられている。
更に当時の資料には、在沖縄の乳業が「民間の牛乳需要量を生産し、更に一級許可を受けて米軍家族部隊向けにも輸出」との表現もあった。駐留しているアメリカ人に売るにはやはり、1級許可を取得しなければならなかったようだ。
古いアメリカの牛乳キャップには、「A Grade」を標示するものが散見され、米国本土の基準を沖縄へ持ち込み?展開していた様子も窺える。かつての日本酒/清酒にあったような“税制連動・品質監査”目的の等級設定とは趣旨が少し異なるものらしい。
一級の免状がなければ乳製品の(一大市場である米軍基地関係者への)販売ができなかった…とすれば、各乳業がこぞって1級標示を行い、同時に処理工程の問題から標示できなかった乳業もあった理由も腑に落ちるところだ。
― 謝辞 ―
マルサンや等級標示、「Aサイン」などに関して向名(こうめい)館・名護様よりご教授頂きました。
また、関連資料を和田(モリ)様よりご提供頂きました。